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ALFP eマガジン『Voices of Asia』

アジア各国の市民社会を牽引するALFPフェローを中心としたアジアの知識人に、それぞれの地域や専門領域で起こっている現場の声を届けてもらい、今そしてこれからのアジアを考えるためのe-magazineを2018年より発行しています。

本号に掲載の論稿は、現在の新型コロナウィルス感染拡大の影響により世界的に人の移動が制限される前に書かれ、編集したものですが、このような状況だからこそ、これからの人の移動がどのように変化し、どのような社会的な影響があるのかを考える視座の一つとなればと考え、配信することにいたしました。

April 2, 2020

ALFP eマガジン 第6号 Migration and Multicultural Coexistence

バックナンバー

概要

ゲストエディター:Diana Wong(新紀元大学学院 学部長 / 1998年度ALFPフェロー)

人の移動はこれまでずっと人間社会が経験してきたことだが、過去数十年は本号のテーマでもある「人の移動と多文化共生(Migration and Multicultural Coexistence)」の問題が国や国際社会の議題のトップになるほどの規模で、集団移動が発生している。グローバル化がこれまでにない経済的機会をもたらしたことに加え、脆弱な国々において何十年にも及ぶ政治的暴力と経済状況の悪化に起因する深刻な混乱が起きたことで、何百万もの移民や難民が国境を越えてアジア域内を移動し、さらには域外に出る者も現れた。

近年のこのような集団移動により生じた課題は、いわゆる送り出し国と受け入れ国のいずれにおいても、個人、家族、社会、行政など全ての当事者にとって極めて大きい。移住する者や、彼・彼女たちが国に残さなければならない人々が、喪失感と新たな環境への適応という現実と闘わなければならないように、「受け入れ側」の社会も「自分たちの中に見知らぬ人を受け入れること」によって生じうる、否定しようもない文化的、社会的、経済的なあらゆるストレスに対処しなければならないのである。

移住、そして移民・移住者の権利を管理するために、国家と国際社会のレベルでどのような政策を整備すべきなのか。同様に重要なこととして、移住と多文化共生を、政治的対立を生む破壊的な力ではなく、社会を豊かにする力とするために、社会レベルで参考にできる過去の多文化共生の実例にはどのようなものがあるだろうか。